AIが自律決済する「エージェンティック・サプライチェーン・コマース」を日本初特許化

AIが自律決済する「エージェンティック・サプライチェーン・コマース」を日本初特許化

サイカルトラストは、AIが商品の真正性を自律的に照合しながら決済を完結させる「鑑定証明システム」に関する新たな国内特許(第7909347号)を取得した。この特許は、「エージェンティックコマース」と欧州で義務化が進む「デジタルプロダクトパスポート(DPP)」を組み合わせ、決済ごとに来歴を確認する「エージェンティック・サプライチェーン・コマース」を日本で初めて権利化するもの。「人間が確認して決済する世界」から「AIが自律して決済する世界」への転換を狙う。

背景:目視確認の限界と「エージェンティックコマース」の台頭

従来の商取引では、企業が商品を購入する際、人間が書類や商品を目視で確認し、取引先の来歴を確かめた後に決済を行ってきた。しかし、精巧な模造品は人間の目では見抜けず、書類の改ざんも容易で、確認には時間がかかる。国際的な模造品取引は2021年に約74.7兆円(1ドル=160円換算)に達し、ニューヨークでは偽造安全認証ラベルを貼った電池による火災で18人が死亡するなど、被害は深刻化している。

一方、AIが商品選定からオンチェーン決済まで代行する「エージェンティックコマース」の導入が進む。政府の「骨太方針2026」はオンチェーン金融の推進を初めて明記し、金融庁も2026年9月に社会実装を促す方針を公表。2026年8月からは43社が参加する「トークン化預金」の銀行間即時決済の実証も始まっている。ただし、現状のエージェンティックコマースは画面上の商品情報と取引条件の合致のみで支払いを確定させ、来歴の確認は行わない。

AI決済の概念図人間からAIへ「確かめる時間」を移行し、AIが真正性を照合して支払う商流の概要

3つの課題:来歴確認、決済速度、記録性

エージェンティックコマースだけでは、以下の3つの課題が残る。

  • 証拠の観点:来歴を確かめずに支払うため、偽りの来歴がまかり通る。第三者による証明の仕組みがない。
  • 速度の観点:オンチェーン決済は秒単位で完了するが、人間が来歴を確認すれば日単位の時間がかかり、両立しない。
  • 記録の観点:何を根拠に支払ったのかという理由が残らず、後から不正が判明しても原因を特定できない。機密情報の開示が必要になるケースもある。
3つの課題図エージェンティックコマースにおける来歴不一致、決済速度、記録性の課題

解決策:鑑定証明システムによる3つの仕組み

新特許技術「鑑定証明システム」は、上記課題を解決する3つの仕組みを持つ。

照合:来歴と決済履歴の一致による真正性確定

DPPに記された商流の来歴と、オンチェーン決済の上流から下流への決済履歴をAIが自律的に照合する。両者が一致した場合のみ「本物」と判定し、一致しなければ支払いを確定させない。決済履歴は本人にも消せないため、来歴の改ざんを検知できる。

振り分け:リスクに応じた照合手順の自動組み立て

取引の要求元や過去データからAIがリスク区分を判定し、照合手順を自動で組み立てる。低リスク取引は即時通過、高リスク取引は詳細に調査。手順外の処理はシステム的に遮断され、例外は人間の判断に戻す。24時間365日の決済を止めずに確実な確認を実現する。

記録:照合記録の連結とゼロ知識証明

どの手順で照合し、どう判定したかを監査記録として残す。後から不正が判明しても、AIの誤判定か人間の恣意的操作かを追跡可能。ゼロ知識証明を活用し、機密情報を開示せずに「本物であること」だけを証明できる。各取引の記録は次の売買へ引き継がれ、製造から廃棄まで一本化される。

解決策の3要素鑑定証明システムが来歴照合、リスク別振り分け、支払い記録を残す仕組み

今後の展望:日本発のルールメイカーへ

サイカルトラストの須江剛代表取締役は、「サプライチェーンの真正性は、商品に書かれた情報からではなく、決済から生まれる」とコメント。今後も鑑定証明システムに関する分割出願を継続し、技術の進化に応じて権利範囲を更新する方針。中核特許群は基本特許としての功績が認められ、2025年に発明大賞(発明功労賞)を受賞している。

未来の商流図製造から即時決済までDPPとAIで来歴追跡し、本物のみ流通する世界の展望

決済が真正性の証人に

本特許の核心は、決済履歴を来歴の改ざん防止に活用する点にある。売買に必ず伴う決済の記録を、消せない証人として位置づける発想は、AI時代のサプライチェーンにおけるトラスト基盤の新たな方向性を示す。EUのDPP義務化が進む中、日本のデータ主権や製造業の競争力に影響を与える可能性がある。

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